2016-05-19

【連載企画】第四回これが私のバイブル本!

グローバルマーケティング部の川口です。
スタッフブログで私のバイブル本に関して書いて欲しいというリクエストがあり、改めて読書について振り返ってみました。 個人的には好きな作家や勧められた本を中心にジャンルにこだわること無く読んでいると思います。

※バイブルとは、常に指針を求めて読み返すの本こと。または、座右の書を指します。

過去記事:これが私のバイブル本!はこちら
第一回これが私のバイブル本!「自省録」ネットワークデザイン事業部高橋
第二回これが私のバイブル本!「アルケミスト 夢を旅した少年」グローバルマーケティング部 川添 第三回これが私のバイブル本!「パイロットフィッシュ」グローバルマーケティング部 松野

読書のキッカケ

読書を始めたきっかけは小学生の時、学校の図書館で出会った江戸川乱歩の明智小五郎と少年探偵団シリーズです。 全シリーズ30巻以上ありましたが、全巻読破しました。そのおかげで、活字溢れる長い本を読むことに抵抗感はなくなりました。 読書の魅力は読んだあとにリフレッシュ出来ることであり、子供の頃は本読む事でその世界に引き込まれる感覚が楽しく、寝る時間を気にしながらもベッドで読み耽ていました。

読書を通じて色々な学びを得ることは多いのですが、私にとってのバイブル本とは何度読んでも新たな発見が都度あり、心に響く作品と言えます。 このような本は何作かあるのですが、今回は山本周五郎氏の「赤ひげ診療譚」をご紹介したいと思います。

私のバイブル本はこちらです。

赤ひげ診療譚

タイトル「赤ひげ診療譚」

著者:山本周五郎
出版社:新潮文庫

バイブル本との出会い

私のバイブルの出会いは大学1年生の一般教養の文学の授業で当時の先生が紹介してくれた事でした。
実は当時、私自身は志望校に進めず、滑り止めとしての大学に入学した時分でした。
そのような事もあり立場は全く違いますが(笑)、赤ひげ診療譚の保本登と似たような心境だったから強烈に印象に残ったかも知れません。

ただ、滑り止めなんて書きましたが、今では母校を卒業した事を誇りに思っておりますし、この一般教養の文学や歴史の授業を通して様々な書籍を読む事になったことは今でも本当にラッキーだったと感じています。文学の仲先生から紹介されたことがきっかけで、山本周五郎の他にも遠藤周作や夏目漱石など、今でも好きな作家の本を読むようになりました。

赤ひげ診療譚とは

まずこの小説のストーリーは、江戸時代に幕府の御番医というエリート職に就くべく、長崎で蘭学を学んできた保本登はあろうことか、御番医の対局に位置するお金を払う事も出来ない貧民層が駆け込む小石川養生所で医員の見習いとして勤務させられることになった。

この養生所の医長は赤ひげの異名を持ち、乱暴な言動であるが名医であり貧しい患者に寄り添い治療する新出去定(にいで きょじょう)。エリート街道から逸れるし、婚約者にも逃げられた現実から、登は去定の方針に反抗し酒浸りの日々を送る。

しかし、ある事件を境に去定の無骨だが心優しい精神と言動に次第に惹かれ始め、また自身も江戸の貧しくも人情味溢れる人達の治療に当たる中で様々な経験を積み、医学の知識だけでは解決出来ない問題があることを知り、人として、また医師としても成長して行く物語です。

赤ひげ診療譚から感じるもの

富や名誉にこだわらず医師として貧しい庶民に寄り添い、時には身体的な治療だけでなく患者を取り巻く人間関係や劣悪な環境を改善すべく一緒に苦悩する赤ひげ・去定と、最貧民層の養生所の見習い医師として赴任し、去定に反抗し自分勝手に逃げ出すことばかりを考えていたが、去定や患者と触れ合う中で見えた去定の人間性に徐々に魅了され気づけば人生の師と尊敬し、最後は御目見という幕府の要職への就任を蹴って養生所に残り献身的に治療することを選択した青年医師・登の姿に毎回、心を揺さぶられます。

最後の去定と登の会話を読み終えたら、何とも言えない清々しく、そして人に優しくなれるような気持ちになれます。 また人は知識ではなく、経験の積み重ねよって大きく成長するものと感じます。

それから、赤ひげ診療譚は8つ章で構成されており、各々は基本的には独立した物語なのですが、それぞれが有機的に絡み合う事で読み進むにつれて面白さが増してきます。 ただ全ての章は実は結論が明確でないまま終わります。 ですからこの後に去定や登はどう対応したのか?自分の中での読む度に答えや考えに違いがあるのを感じます。 それはその時の私の心情に依存したり、また年を重ねるにつれて得る経験によって変わるのだと思いますが、その心境の変化を感じれるところがこの作品の好きなところです。

そして印象深いセリフは様々な経験を積んで成長した登の言葉ですが、

ー 罪を知らぬ者だけが人を裁く。
登は心の中でそう云う声を聞いた。
ー 罪を知った者は決して人を裁かない。


引用元:新潮文庫「赤ひげ診療譚」(P283より引用)

自分の偏った知識や自分の狭い視野の考えだけで生きてきた人は、容易く他人の価値観や考え方を否定してしまうかも知れない。 他の人の考え方や価値観を受入れる事も重要であると、この本を読む事によって改めて感じます。

最後にこんな方におすすめです

人生で挫折感を味わった時や物事が思い通りにならず疲れた時などに読んでみてはいかがでしょうか。
本作の数々の名言もその読む時の年代や精神状態で心への響き方、受け取り方が異なるように感じるのも名作であるが所以かも知れません。 人生の色々な節目で読んでみることをオススメします。
それから、小説を読んだ後は是非、黒澤明監督の「赤ひげ」もご覧下さい。
映画も小説に引けを取らない名作です。映画では去定を三船敏郎、登を若き日の加山雄三が演じてします。 映画は二十年以上前に初めて観ましたが、それ以来、何度小説を読んでもこの二人が頭に出てる程のハマり役です。

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第一回これが私のバイブル本!「自省録」ネットワークデザイン事業部高橋
第二回これが私のバイブル本!「アルケミスト 夢を旅した少年」グローバルマーケティング部 川添 第三回これが私のバイブル本!「パイロットフィッシュ」グローバルマーケティング部 松野